魅惑のくちびる

「違いますよ……わたしたち、そういうんじゃないんです」

「あれ?あたし、口カタイからホントのこと言ってくれて大丈夫よ?」

姉御肌で女の色気がたくさんの梶原さんは、いくつも恋をしていろんな経験をしてきただろうけど……さすがに、この相談はできない。

「今話してるのがホントのことです……。

でもそんな噂あるなんて知らなかった……わたし、女子社員にいじわるされちゃいますってば……」

うちの課だけじゃなく、いつどこに敵が潜んでいるかわからない状態。

そう考えたら、会社に来るのが少し嫌になった。


「うーん。あたしの勘は割と鋭いんだけどなぁ。今回ばかりは璃音ちゃんを信じよう。」

「そうして下さい……お願いします。」

「で、さ」

「はい?」

「彼氏って会社の人?」

梶原さんが、興味津々に尋ねてきたその時。


「梶原くん、ちょっといいか?」


タイミングよく、大北課長からお呼びがかかった。

梶原さんはちぃっと舌打ちをすると、じゃまた今度ゆっくりね、と残念そうな顔をした。

< 90 / 240 >

この作品をシェア

pagetop