魅惑のくちびる
「ところで……松原さん、知ってます?
わたしたち、なんだか噂が出てるみたいですよ」
エリンギのパスタをフォークでくるくるしながら早速、知らせないといけないことがあるのを思い出した。
「噂?仲がいいって言うほど、ベタベタしてないけどなぁ」
「いえ……給湯室で時々お話してるのを見られているみたいです。
あとは……梶原さんいわく、女の勘ってやつらしいですよ。」
タバスコの蓋をしめながら、松原さんは大きく吹き出した。
「いやー梶原の勘、たいしたことないなぁ!
確かにオレが想ってるのは正解だけどさぁ、その後は現段階ではハズレだもんなぁ。
あっ……それとも、予知能力持ってるとか?」
この様子を見ると、さほど、気にしていないみたいだ。
……そうだ。
雅城の耳に入りやしないかってびくびく気にしているのは、わたしなんだ。
「まぁ、いいんじゃない?言いたいやつには言わせておけば。
それも、本当になれば、噂じゃなく真実になるだけの話さ。」
トマトがたっぷりかかったエビを頬張ると、あまり気にしなさんなと笑った。