巫女と王子と精霊の本


「その事なんだが…」


エルシスは頬をポリポリとかきながら言いずらそうに言葉を詰まらせる。


「う、ん?」


はっきりしないエルシスって何か珍しい。


そんな事を考えていると、エルシスは私の手をとった。


「エルシス!?」


あたふたする私をエルシスはじっと見つめる。


「鈴奈、お前の夜を俺にくれないか」

「…は?」



夜を…って!!!!
えぇぇっ!!!?


どういう意味!?


「少し散歩しないか?」

「散歩…」


なんだ、散歩か!!
いらぬ心配をしてしまった…


いや、その……
夜っていったらその……


「鈴奈、出来れば返答は早く頼む。待ち時間が苦しい」

「あ、え!?い、行きます!」


勢いで返事しちゃったけど、私、距離をおくって決めたのに…



「良かった。ほら、行くぞ」


エルシスは私の手をひき歩き出す。


この手を振り払えるほど…
私は強くない……



前を歩くエルシスの背中を見上げる。


…エルシス……
これ以上私を好きにさせないで……










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