巫女と王子と精霊の本


「どうだ、綺麗だろ」

「うわぁっ!!」



目の前の絶景に目を奪われる。


エルシスが連れて来てくれたのは庭園だった。


蛍のように淡く光る花や星のように強く光る花。


見るもの全てが初めてのものばかりだ。


「綺麗……。私、生まれて初めて見たよ!!」

「花か?」

「光る花!!私のいた世界にはなかった…」


って……
私、記憶喪失設定だった!!


「な、なかった気がするなぁー…なんて」


この先隠し通せる自信ないよぉー……


「そうか、それは良かった。この花はな、カイン国にしか生えてない。名はミカエラという」

「ミカエラ……?」

「旧カイン語で真白なる乙女という」


真白なる乙女……


白く輝くこの花にぴったりな気がした。


「素敵な名前だね…」


花を見ながら溜息が出る。それ程までに美しいのだ。


「もし………」

「え……?」


花を見つめていると、不意にエルシスが口を開いた。


私は花から視線を外し、エルシスを見上げる。


エルシスの目は真剣そのものだった。


エルシス………?


自然と私も姿勢を正す。









< 103 / 300 >

この作品をシェア

pagetop