巫女と王子と精霊の本
「どうだ、綺麗だろ」
「うわぁっ!!」
目の前の絶景に目を奪われる。
エルシスが連れて来てくれたのは庭園だった。
蛍のように淡く光る花や星のように強く光る花。
見るもの全てが初めてのものばかりだ。
「綺麗……。私、生まれて初めて見たよ!!」
「花か?」
「光る花!!私のいた世界にはなかった…」
って……
私、記憶喪失設定だった!!
「な、なかった気がするなぁー…なんて」
この先隠し通せる自信ないよぉー……
「そうか、それは良かった。この花はな、カイン国にしか生えてない。名はミカエラという」
「ミカエラ……?」
「旧カイン語で真白なる乙女という」
真白なる乙女……
白く輝くこの花にぴったりな気がした。
「素敵な名前だね…」
花を見ながら溜息が出る。それ程までに美しいのだ。
「もし………」
「え……?」
花を見つめていると、不意にエルシスが口を開いた。
私は花から視線を外し、エルシスを見上げる。
エルシスの目は真剣そのものだった。
エルシス………?
自然と私も姿勢を正す。