巫女と王子と精霊の本
「すまない、そんな顔をさせたいわけじゃないんだけどな…」
エルシスはガシガシと後頭部を掻いた。
私、どんな顔してたんだろう…
「自分が誰かも、どんな生活していたかも分からないなんて辛かったろ…」
エルシスは私の頭を優しく撫でる。
「ただ、たとえ思い出せなくても、お前は一人じゃないっていいたかったんだ」
「エルシス……」
この世界での居場所はここだ。エルシスのいるこの場所こそ私の居場所…
「ありがとう、エルシス。エルシスに会えて良かった」
ずっと憧れてた。
どんなに恐ろしいモノにも立ち向かうその姿…
そんなエルシスに惹かれていることも分かってる。
でも……
エルシスには、もっと相応しい人がいる。
エルシスと結ばれる為に今辛い思いをしているお姫様が……
―ズキンッ
胸が痛い…
これ以上は引き返せなくなる…