巫女と王子と精霊の本
「ねぇ、エルシス。私はあなたの幸せを何よりも願ってるよ」
「突然どうした」
エルシスは不思議そうに私を見つめる。
そんなエルシスに笑顔を向けた。
「忘れないで、この先どんなに辛い事があったとしても、あなたは絶対に幸せになるから」
私が幸せにしてみせる。
エルシスにしてあげられる唯一のことだから…
「…それは鈴奈が見た未来か?」
「私が望む未来だよ…」
私は、あなたを死なせない。お姫様とあなたが幸せを紡ぐ未来を…
私が切り開く。
「なら俺は、お前の幸せを願っていいか?」
「私の…幸せ……?」
聞き返せばエルシスは私の頭をまた撫でた。
「鈴奈、何を抱えているかは分からないが、お前の傍には俺がいる」
「…エルシス……」
「守ってやる、だから頼れ」
…それだけでいい…
今はただ傍にいてくれるだけで…
私は、それだけで十分…
「ありがとう、エルシス…」
だから私は笑顔を返した。笑った私を見てエルシスも笑う。
こんな時間がずっと続けばいい、なんなら止まってしまえばいいと願わずにはいられなかった。