巫女と王子と精霊の本
「あ、あの、エルシス王子ってご存知ですか?」
この国の人なら知ってるかも…。
「エルシス王子かい?そりゃあ知ってるさ!!エルシス王子は隣国カイン国の王子で、マニル国とは同盟を結んでるんだ」
「カイン国の王子!!?」
そうだったっけ!?
よりにもよって波に襲われる国の王子だったなんて…。
ちゃんと、物語読んでおくんだった。
本を開き、内容を確認する。
物語では、エルシス王子が自国、カイン国にマニル国の民を避難させる…本当だ。
でもカイン国も……波に飲まれるのに!!
「どうすれば……」
でも、この物語は正しく進む事で幸せな結末を迎える。
なら……。
「カイン国へ…。カイン国のエルシス王子に助けを求めて下さい」
「カイン国へ?高い所へ逃げるんじゃ駄目なのか?」
「津波はトアルの丘を超えて次にカイン国を襲います。だから、あなたはエルシス王子にそう伝えて。そうすれば、エルシス王子はあなた達を必ず助けてくれる」
物語の通りに。
何一つ間違えては駄目だ。
「わかった。必ず伝えよう」
「あ、それから!!エルシス王子にハルバレーの丘へ逃げてと伝えて下さい!!」
「ハルバレーの丘だな。わかった。お前も時を見て早く逃げろよ」
私は男性の言葉に頷き、丘とは反対方向に走り出す。
「急がなきゃ!!」
手遅れになる前に!!
そう決心し、あたしは必死に走った。