巫女と王子と精霊の本



「…巫女サマ、おーい」

「だから私、聖徳太子じゃっ…ってあれ?」


今のはセキ??
もう、何だかごっちゃになってきた………



「巫女サマ、もしかして寝ぼけてる?」


「起きてます、起きてます。で、どうしたの?」

「どうしたのって………。それ、俺のセリフ。ぼーっとしてるけど?」


ぼーっと、あぁ、馬さん達と話してる時は心話だからね。


「大丈夫、この子達と話してるだけだから」

「……は?」


セキはすっとんきょうな声を出した。


そりゃそういうリアクションになるよね。



「次に災厄を防げるかはこの子達にかかってるからね」


誰よりも早く竜の咆哮に気づいて教えてくれた。本だけならまだ竜に対して警戒も出来ていなかったと思う。


―みんな、力を貸して。もし外へ出ることがあって、マヌラ族について何かわかった事があれば教えてほしいの。


『あ、そういえば前に遠出をした時に出会った野うさぎが言ってたな』


野うさぎ………
さすが動物社会!!



『なんでもマヌラ族は竜と人間の混血故に体に鱗やら牙やらがあるらしい。また怒り狂うと竜になるんだとか』

『あら、私がお偉いさんを運んだ時は鋭い爪をもっていて、人間やら動物やらの血肉を喰らっているんだって聞いたわ!もう私恐くって!」


―そ、それは怖い!!でも女の子なんでしょう?そ、そんな凶悪なわけ…


『え、でも僕寒い地方では小さい人間の子どもがウサギさんとか鳥さんの毛をはいで食べちゃうって聞いたよ?」


―そ、それは………………


寒い地方関係なく食べられてるんじゃ…



『私達も明日は我が身よ…』

『え?』

『知らなくともよいこともあるのだよ。おのずと知るのだから…』


な、なんか私、人間でごめんなさい!!
さ、さすが弱肉強食の世界………


シビアすぎる………












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