巫女と王子と精霊の本
「……巫女様?」
黙り込む私を心配してか、セレナが私の顔をのぞき込む。
「……大丈夫、それより外に出たいんだけどいいかな?」
外の様子が気になる。
民や馬さん達の事も心配だ。
「いけません!外は危険です!巫女様は部屋にいてください!外の様子なら私が確認してまいりますから!」
「セレナ、私だけ安全な所にいるわけにはいかないよ。私はアルサティアの巫女、みんなが…何よりエルシスが私を信じてくれている限り私は守らなきゃ、このアルサティアを…」
「巫女様……」
私の言葉にセレナは悲しげにうつむく。
「時々、あなたを同じ年頃の友達のように思う時がありました。ですが……やっぱりあなたは気高く、美しい巫女様です。私は、あなた様に仕えられた事を本当に幸せに思います」
セレナは笑って私の背中を押す。
「共に行きます、巫女様」
「…セレナ………」
セレナ、心配してくれてありがとう。
本当は私の事止めたいはずなのに、笑顔で送り出してくれるセレナが大好きだよ。
セレナや、エルシス、セキ……
私に居場所をくれるこの人達の為に、大好きな物語の為に…
「いこう、セレナ」
私達は外へ向かった。
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外へ出ると建物が崩れ、逃げ惑う民の姿があった。
「……これじゃいけない…。私が守らなきゃ……」
その為に私はここへ来たんだ!!
「……セレナ、ここをお願い。みんなを集めてエルシスの指示を待つように伝えて!」
それだけ言って、私は駆け出す。
「巫女様!?」
セレナの声が聞こえたがそのまま走った。今は時間が惜しい。
「ここでいいか………」
私は城の庭で本を開く。
「……お願い。私の大切な世界を守りたいの。私はどうしたらいい?
教えて!!」
そう叫んだ瞬間―…
―パァァァァァッ!!
本が光を放ち、ページが物凄い勢いでめくれる。
―竜が現れた時、王子は勇敢にも戦いますが、大きな傷を負い、死んでしまいます。
そこに、王子に助けられた竜の血をひくマヌラ族の少女が竜を鎮めようとしますが竜には届かず、少女も竜の怒りをかい、死んでしまいました。
これは黒の結末………