巫女と王子と精霊の本
《エルシスside》
――カイン国、カイン城
「エルシス王子!エルシス王子!」
「何だ、どうした」
城の廊下を歩いていると、血相を変えた兵が俺に駆け寄ってきた。
「嵐です!!嵐がマニル国を襲っていると報告が!!」
「何だと!?」
「高波が襲ってくるのを見た者がいるのだとか!」
嵐…まさかアルサティアで…か…?
あの娘……。
『嵐が来ます!!!沢山の死者が出る!!』
あの必死な顔をした娘の姿を思い出す。
まさか本当に言った通りとなるなんてな…。
まさか、嵐が来ることを予知した…?
「エルシス王子!良かった、ここにいましたか!」
今度は違う兵がこちらへと駆けてくる。
「どうした?」
「マニル国の民がエルシス王子に助けを求めて城門前に!!」
「わかった、すぐに中へ!!俺も行く!」
マントを翻し、城門へと向かう。
アルサティアの天が荒れるなど、今まで無かった事だ。
何か嫌な予感がする…。