巫女と王子と精霊の本
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「巫女様!!」
「どこ行ってたんだよ、鈴奈」
町まで降りるとセレナとセキが私達に駆け寄る。
「本当にごめんね、二人とも…」
私は頭を下げる。
きっと二人にも心配かけたよね、私…
「怒りたいのは山々なんですが、巫女様、ここも危険なのにはかわりませんね…」
本当に今安全な所なんて無いのかもしれない。
「鈴奈、セレナ、俺の後ろに」
エルシスが私達を背に庇い剣を構える。
「……全軍、構え!!」
エルシスの掛け声で兵達が一斉に剣を構える。
「―グォォォオッ!!」
空から咆哮が鳴り響く。
晴天には似合わぬ災厄の足音。
「……ここにいるはず…」
私は辺りを見渡す。
エルシスがここを戦場に選んだのなら、少女はこの場にいるはずだ。
なんにせよ、エルシスが死ねば世界が終わる。
「―グォォォオッ!!」
突然空が陰った。
おそらく……………
「りゅ、竜が出たぞーーっ!!」
「キャーーッ!!」
「に、逃げろーっ!!」
あちらこちらで悲鳴が上がる。
ー来た………
私も空を見上げる。
それはあまりにも大きく、人間が何人集まっても敵うはずなどないほど圧倒的な存在だった。
「こんなのって………」
思わず後ずさる。
膝が震えて崩れ落ちそうだ。