巫女と王子と精霊の本




「…エルシス!」

私はエルシスの手を握る。


「鈴奈……?」

「エルシス、あなたの人に勇気を与える力を貸して」


今も迷っているだろう世界の希望の心を動かして!!



「…お願い、マヌラの血を引くあなたにしか救えないの!!」



私はありったけの声で叫ぶ。


「力を恐れないで!あなたは暴走なんかしない!しても巫女である私が止める!ここにいるエルシスもあなたを止める!」




お願い……どうか踏み出して…



「あなたにしかできないんだよ!」

「俺も約束する、お前の事を必ず守る!お前の力を貸してくれ!!」


エルシスも何かをさとったのか、一緒に声を上げた。


「信じて、怖くないよ。あなたを必ず守るから…」



しばらくすると人だかりから一人の女の子が歩いてきた。


青い髪、青い瞳の少女。
外見は普通の少女だった。
まだ小学生くらいの歳に見える。


「あなたがマヌラ族の末裔だね」



私は少女の手を握る。



「ありがとう、来てくれて…」


少女はただ首を振る。


「私は鈴奈、彼はエルシス。あなたの力を貸して欲しいの、あなたにしか出来ない」

「…私は…ルイヴィエ…。でも私…きっとちゃんと出来ない…怖い……」

「大丈夫、あなたなら出来る。私は未来を見る巫女だもの、あなたの歌が世界を救う」

「何かあっても、俺が全力で守ろう」



エルシスがルイヴィエの頭を優しく撫でた。



「…エルシス王子は…私を助けてくれた…。巫女様も…。私…役にたちたい…」

「ルイヴィエ…」


ルイヴィエは怯えながらも私を見上げる。決意の色が見えた。


「……あなたの歌を竜へ捧げるの。きっとあなたならわかるはずだよ」


少女は目を見開く。


「鎮め歌…?それなら私、知ってる…」



少女は目を瞑る。
そして奏で始める。


私にはルイヴィエの歌の意味は分からないけど、美しい音色だった。



「…………………」



竜は静かにルイヴィエを見つめる。













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