巫女と王子と精霊の本
『……マヌラの一族か…』
竜が口を開く。
嘘、私竜の言葉もわかるの!?
『あたりまえだ、お前は精霊と契約したのだぞ?』
―わ、エクレーネさん!
『して、あれは私の泉まで焼こうとしたな。鈴奈、あれを説得して泉を守れ』
―エクレーネさん…。そうだね、エクレーネさん達精霊も生きる場所がなくなっちゃうだよね……
「…よし、エルシス!」
私はエルシスの手を引いて前へと出る。
―エクレーネさん、心話ってエルシスにも聞かせられないかな?
『まかせろ』
―キィィン!!
「うっ……何だっ!?」
―エルシス
「なっ!!?」
エルシスは私を驚いたように見つめる。
―聞こえてるみたいだね、エルシス。心で会話してみて!
「心で……」
『こうか…?』
―そうそう!
エルシス、戸惑いながらも飲み込み早いな。
『人間、何故心話が出来るのだ』
竜が私達を見る。
―私は精霊と契約しているからです。
『人間ごときが精霊と?なんと愚かしい』
『ほう、それは私への侮辱か、竜よ』
竜の言葉にエクレーネさんが答える。
『人間など世界の塵だろう。何故力を貸す』
『人間全てが悪ではない。お前とて森を焼く、この世界にとって悪だ』
エクレーネさんの声が響きわたる。
『お前達は何故この地に?』
エルシスが不穏な空気を壊すように口を挟む。
『…人間が我らの世界を壊した』
―あなた達の世界を?
私達はあなた達のような竜を倒す力なんてもっていません!
それは本当に人間なんですか!?
『間違いない、人間だ。人間は我らの世界を虚無へと還し、我らは復讐の為にここへきた。我らの居場所を取り戻すために!!』
『お前達は別の世界に移り住んだと聞く。普通の人間が別の世界に行く事など出来るのか?』
―…別の世界……
いや、出来るのかもしれない。
現に私はこの世界に来た。
『鈴奈…』
エクレーネさんが私の名前を呼ぶ。
もう、隠してはいられないか…
それに、私には1つの推測が頭に浮かんでる。
―私は…別の世界から来ました。アルサティアとは違う日本という所からこの世界に。
『…どういう…事だ……?』
エルシスは驚いたように私を見る。
そりゃ、そうだよね。
私、記憶無いことになってるし……
『なら娘、お前の世界の人間の仕業か?』
明らかな敵意を向けられる。