巫女と王子と精霊の本
―私がもっとはやく止められていれば…本当にごめんなさい…
未来がわかっても私が行動する頃にはすでに手遅れだ。
なんて私は無力なんだろう…
『…だとして、我らはどこにこの憎しみを向ければ良いのだ!!』
竜は悲痛な声を上げる。
『…どうか鎮まって…。怒りを納めて下さい』
するとルイヴィエが声を上げた。
そして私達の前に出る。
「ルイヴィエ……」
私はルイヴィエの手を握りしめる。
ルイヴィエの手は震えていた。
「…巫女様…巫女様を見ていたら、私も何かをしなきゃと思いました。…だから…」
ルイヴィエは竜を見上げる。
『巫女様は私達を救ってくれ…ました…。だから…私は生きています。巫女様が悪いなんておかしいです…』
「……ルイヴィエ……」
泣きそうになった。
この子は、私を悪くないと言ってくれる。
私は弱くて卑怯だ。
やっぱり嘘も守れなかったことも誰かにゆるしてほしいと思ってたのかもしれない。
『怒りをぶつけるべき場所は壊した人間その者にぶつけるべきです…』
ルイヴィエの言葉に竜は驚きに目を見開いた。
『……マヌラの一族よ、お前はその人間を信じるというのか』
『はい。私を助けてくれた人だから…』
『……理解できぬ…。だが…お前が言うのだ、この人間の行く末を見定めるのもよいのかもしれぬ…』
―……!!
『勘違いするな、我らは見定めると言ったのだ。お前を信じたわけではないぞ巫女』
―それでも構いません。ありがとうございます!
私は深く頭を下げた。