巫女と王子と精霊の本
「マニル国の民よ!!良く無事で!!」
民に駆け寄ると、民達はホッとしたような顔をする。
「エルシス王子!!すまねぇ、通してくれ!!」
民達の間を一人の男性がかきわけて前へと出た。
「エルシス王子、すまねぇ、俺達を助けて下さい!あんたなら俺達を助けてくれるって聞いたんだ」
「もちろんだ、ここに避難してくれ」
「いや、カイン国もじきに波にのまれる。だからハルバレーの丘に逃げるんだ!!」
カイン国が波に!?
ハルバレー丘に逃げろ…だと……?
「その話の根拠は?」
「無い。だが女がそう伝えろと」
「女…?」
思わず先程の女が頭に浮かんだ。
まさか……まさかな。
なんとなく、あの娘なんじゃないかと考えてしまった。
「栗色の瞳とそろいの肩くらいまでの髪をした女です!そいつがそう言ってました!」
…栗色……先程の娘と同じ……。
「そいつのおかげで俺達は助かったんだ」
「その女は?」
「それは…まだ残っている民を助けに残ったんです。津波が来て、俺達は先に行きました」
津波が!?
あの娘の言う通りになったってことか!!
「話はわかった。お前達は先にハルバレーの丘へ!!俺は女を迎えに行く!!」
もしかしたら他の民と一緒に逃げのびたかもしれない。
助けに行かなければ!!
「だが、マニル国はもう…」
「だが生き延びているかもしれない。なに、危なくなったらすぐ戻るさ」
俺の言葉に、男性は頷いた。
「すまない、王と民にハルバレーの丘まで避難するよう伝えてくれ」
「はっ!!」
近くの兵に言づてを頼み、俺は馬に跨がる。
「はっ!!」
馬の腹を蹴り、俺はマニル国へと向かった。