巫女と王子と精霊の本
「わっ、巫女様大胆発言?」
「え?あ…そうじゃなくて……」
って、そうなんだけど!
本当はエルシスに惹かれてる自分がいる。でも…認めちゃいけない。
必ず辛い思いをする。
私とエルシスは絶対に結ばれる事はない。王子様と結ばれるのはお姫様だけって決まってるんだから……
それに、私はこの物語の登場人物でもない。本当、幻みたいなものだ。
「…鈴奈、お前が俺の傍にいるのは…お前の役目の為か?」
「…え……………?」
「お前はどんな思いで俺の傍にいるんだ?」
どんな思いってそんなの………
私はエルシスの傍にいたい…
それは……どんな気持ち…?
惹かれてる、この真っ直ぐで気高い人に。その気持ちは……
「………っ!!」
思い当たった感情に違うと首を振る。
自覚したら止められなくなるこの思いは絶対に認めちゃいけない…
「…エルシスは……大事な友達…だから。ほ、ほらセレナもセキも大事な友達で、だから…傍に…いたくて…」
なんか、必死すぎだな、私。
心の中がもやもやして胸が苦しい。
「…そうか、変な事を聞いて悪かった。行くか」
「う、うん…」
何故かエルシスは悲しそうな顔をする。
そんな表情が目に焼きつく。
私達は無言で目の前のお城へ向かって歩き出す
。
「巫女サマ」
すると後ろのほうを歩いていた私の隣にセキが並んだ。
「ん?なに、セキ」
私は先に前を歩くエルシスを気にしながらセキに視線を移す。
「さっき、友達だからって言ってたけどさ、本当は違うんでしょ」
「…へ!?」
「さっきの、友達とは違う感情で王子を見てる自分への言い訳に聞こえたけど」
…鋭いな、セキ。
というか私がわかりやすいとか!?
「あれ、脈なしじゃないと思うけど。今押せば王子を手に入れられるかもしれないよ?」
エルシスに好きになってもらえたらどんなに良いだろう……
でも………
私は…この世界には関われない。