巫女と王子と精霊の本


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―トアルの丘


「皆さん、大丈夫ですか!?」


なんとか残りの民を連れてトアルの丘まで避難した。


でも…助けられなかった人達もいる。
あたし、助けるとか大口叩いて、全然……。


「おねいちゃん?」

俯いていると、小さな女の子が、私の顔を不安そうに見つめていた。


「っ…今はこの人達を助けなきゃ…。大丈夫、絶対助けるからね」


私は女の子に笑みを向け、その手を握った。


悔やんでる時間なんて無いんだ。
今は目の前にある命を守らなきゃ…。


あの人が、きっとエルシス王子に伝えてくれてる。
なら私達はハルバレーの丘まで行かなきゃ。


「皆さん!!ここもじきに波にのまれます!ハルバレーの丘へ!!そこなら安全です!!」


私は小さな子供の手をひきながら皆に声をかける。


でも…。


「安全ってどうしていいきれるんだ!!あんな津波…安全な所なんてどこにも…」

「ママーっ!!こわいよぉ!!」


「マニル国が滅ぶのなら、わしらもここで共に滅ぶさ…」


駄目だ…。
誰も話を聞いてくれない…。

みんなを助けるなんて簡単に言ってたけど…私はどうすればいいの…?







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