巫女と王子と精霊の本
『いつかあの子は帰らなきゃ。あの子からしたらこの世界は幻想なんだ』
だからか………
鈴奈がこの世界であまり生への危機感がないのはこの世界があいつにとって幻想でしかないから……
だが…………
俺にとっては現状だ。
俺の中に鈴奈への想いがある限り現実だ。
「あいつはちゃんとここにいる。幻想でもなく一人の人間として存在してる」
「そうだね、俺達の前にちゃんといる」
だからこそ、想うのも自由、守るのも自由だ。
「…後悔してもしらないよ、まぁ、本当にそうなれば手遅れさ」
「さっきから一体どういう事だ?」
「お喋りはこのくらいにして、私と遊ばないかい?」
魔女は妖艶に微笑み俺達に手を翳す。
「……£#¢§…」
魔女が何かを唱えたと同時に炎が襲いかかった。
―バチバチッ
「…くっ…」
―ザシュッ!!
剣で炎を叩き斬る。
それでも炎は消えない。
「まるで生きてるみたいだね…」
「あぁ…」
セキの言う通りだ。
さっきから意思があるみたいにくねくねと回っては襲いかかってくきやがる。
「そうさ、これはただの炎じゃない。魔女は精霊とは縁が深いからねぇ!」
―ブオッ!!
「くっ……はぁぁあっ!!」
―ザシュッ!!
襲いかかる炎を斬ってるだけじゃらちがあかない。
炎は魔女の声かけに反応して動いている。…ならば一瞬でも魔女の気を反らせれば隙が生まれるはずだ。