巫女と王子と精霊の本
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「…良かった…」
ハルバレーの丘に着くと、カイン国とマニル国の人達が無事に避難していた。
「ハルバレーの丘って本当に高いんだ…」
トアルの丘とは比べものにならないくらいの高さだ。
「お前、知らないでここへ導いたのか?」
「あ…うん」
この世界に来たばかりだし、本の通りにここへ来ただけだから…。
「お前一体何者な…」
「無事だったのか!!」
エルシス王子の言葉を遮り、言づてを頼んだ男性が駆け寄ってきた。
「あなたこそ!!無事で良かった!伝えてくれてありがとう」
この人がいなければもっと犠牲者が出ていたに違いない。
「ありがとうは俺達の台詞だ!あんたのおかげで助かった、ありがとうな」
男性の言葉に、その場にいた人達が皆頷く。
「あなたのおかげで、私も娘も助かったわ」
「おねぇちゃんありがとう!」
親子が私に深々と頭を下げた。
「そんな!顔を上げて下さい!たいした事してませんから!」
私がしたくてした事だから…。
それに、あたし一人じゃ何も出来なかった。
「わしら年寄りも見捨てずに救ってくれた。ありがたいのう」
「あの時庇ってくれてありがとうな。感謝してもしきれない」
「本当にありがとう」
皆が深々と頭を下げる。
なんかこんな時、どうしたらいいかわかんないな…。
お礼なんて…私はただ自分がそうしたいと思ったからで…それに、救えなかった人もいたから。