巫女と王子と精霊の本
「なんてって、なんの話……」
「エルシス王子」
私の言葉を遮って現れたのは美しいお姫様のような人だった。
「エルシス王子、私と踊ってくださるでしょう?」
美しいお姫様はエルシスの肩腕にそっと触れる。
―ズキンッ
胸が痛んだ。
エルシスに触れないでほしい…
「クリアンヌ姫か、システル王は健在で?」
「ええ、父様は元気よ。是非に我がノルティーン国へお越しくださいと」
「ははっ、国が落ち着いたら顔をみせますと伝えておいてくれるか?」
「ふふっ、父様も喜びますわ」
二人とも、楽しそうだな……
ノルティーン国、このアルサティアの国の一つかな?
初めて聞いた国だ……
「鈴奈」
「あ…うん?」
セキが私の頭に手をおいた。
セキ、どうしたんだろう??
「やっぱり鈴奈は……」
セキはそこまで言いかけて口を閉じてしまう。
「な、何?」
なんとなく、なんとなくだけど、セキが聞きたいことがわかった気がした。
私が……エルシスを好きなんじゃないかって…
「いや、それより外の空気でも吸う?」
「…あ、ううん。私、セレナに用事があるんだった!ちょっと行ってくるね!」
それだけ言いはなってその場から逃げる。
「…嘘が下手なお姫様だ…。全く、どうして俺に泣きつかないかなぁ?」
セキは鈴奈が去った方向を見つめる。
「お姫様の弱ったところを俺が攻めたら、少しは俺を見てくれるかなって作戦だったのにさ」
セキはエルシスの傍へと歩み寄る。