巫女と王子と精霊の本



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「……逃げ出してきちゃた………」


無我夢中で走っていたら、いつの間にか城の庭に出ていた。


噴水の縁に腰掛けて夜空を見上げてみる。月が綺麗だった。


「……月が明るすぎて、星が霞んでる…」


まるであのお姫様みたい。
お姫様は綺麗で、眩しくて………
でも私はただの子供で、お姫様になんかなれなくて……

霞んじゃう………



「…こんなにも私とあの人は違うんだ」


私が巫女でなければ出会う事はできなかった。話すことすらなかったんだ…


「私はただの子供、生きる世界も違う…」



それがこんなにも苦しいなんて……


『想うだけ無駄な事だ』


……え………?

「誰か、いるの?」


立ち上がり辺りを見渡す。
人の気配はない。



でも、確かに今声が………


『お前と俺は繋がっている。故に精神を共有する事も可能だ』


「!!」

『お前の精神に俺が語りかけている』

この声は…………
私と同じ顔のあの人の………


「エクレーネさんと似たような事が出来るんだね」


敵かもしれない、ううん、敵。
敵なのに私の心は落ち着いていた。


この人と話したい、そう思う自分がいる。


『エクレーネ、あぁ、お前の精霊か』

「違うよ、友達」

『…………くだらないな』


声は心底呆れている。
それでも嬉しかった。こうして話せる事が…
















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