巫女と王子と精霊の本
「くだらなくなんかないよ、大事な友達の事だから」
私はまた噴水の縁に腰かける。
そして空を見上げる。
そうすれば、この声の主に近づける気がしたから…
『友、愛する者…。誰かを想うから傷つく。なら想わなければいいだろ?』
悲しそうな声………
この人は誰かを想って傷ついたことがあるのかもしれない。
「でも、それは悲しいよ。ずっと一人は嫌」
『あの世界に戻れば、お前はまた一人だろ』
「…え……?」
あの世界って………
「私のいた世界を知ってるの?」
『知ってるも何も、あれは俺の世界でもある』
じゃあやっぱりこの人も私のいた世界の人なんだ……
『お前はまた人に期待するのか?』
「え……?」
『良い子にしていれば帰ってきてくれるかもしれない、傍にいてくれるかもしれない…』
「!!」
それは…私の…………
私の魔法の言葉だった。
あの日々がフラッシュバックする。
そう、誰もいない家の中、一人で泣いたあの日々…………