巫女と王子と精霊の本


―――――――――――
―――――――――
―――――――


「こんなもんでいいかな…」


自分の荷物をダンボールへと詰める。


そのふたをガムテープでしっかり閉じた。


私、浅夏 鈴奈(アサカ スズナ)は親の転勤で明日引っ越す事になったのだ。


高校卒業間近で引っ越しなんて…。私、転校しても友達出来るかな…。


特別美人というわけでもなく、どちらかというと童顔。
母親は色素が薄く、髪と瞳は栗色だった。


「はぁ……」


不安で一杯になる。
本当はずっとここにいたい。


「あれ…?」


全て片付け終えたと思ったのに、先程閉じたダンボールの上に、分厚い本が乗っかっていた。


こんな本、家にあったっけ……。


不思議に思いながら、それを手に取り開いてみる。


「あ!!懐かしい!!」


幼い頃、私の大好きだった本だった。


王子様とお姫様が幸せに暮らす温かい物語…。
これを見て、お姫様になりたいなぁ…なんて思ったっけ。









< 2 / 300 >

この作品をシェア

pagetop