巫女と王子と精霊の本
「そなたが我等の国の民を救ってくれたのだな」
「なんと、そなたのように若い少女が…。なんと勇敢な…」
突然、私の周りの人だかりが開く。
「えっ…!?」
今度は何!?
目の前には王冠を被った高齢の男性が二人、私の前に立っている。
「我はカイン国の国王、エルデア・カイン」
「我はマニル国の国王、ゼブレード・マニルだ」
こ、国王!?
なんで国王様が私なんかに話しかけてんの!?
「そなたのおかげで、我等の民は最小限の被害に留まった。礼を言うぞ」
「なんでも、嵐が起こる未来を先見したとか…」
先見…というか、私は本来在るべき物語へと変えただけだし。黒の結末を白の結末へ…。
この世界の人達からすれば、これから起こる未来…なんだよね…。
「やっぱりお前…先の未来が分かるのか…?」
「あ…えと……」
今ここで無いといえば、エルシス王子と一緒にいられなくなる。
そうしたら、結末は変えられない。
だったら…。
この機会を利用しない手はないよね。
「はい、私には未来が見えます」
「やっぱり…か…」
エルシス王子は驚きながらも納得したように頷く。
「その力、貸してくれないか?今回、アルサティアではありえない天災が起こった。俺はこれが何か良くない事が起こるの始まりだと思う」
エルシス王子……。
ちゃんと今回の事を受け止めて次に生かそうとしてる。
この人はやっぱりエルシス王子なんだ…。
物語の、勇敢な王子、私の憧れ。