巫女と王子と精霊の本
「鈴奈!!」
「!!」
不意に名前を呼ばれて立ち上がる。
そこには…
「エルシス……」
広間にいたはずのエルシスがいた。
「探したぞ!!」
肩で息をしながら私の元へと歩み寄る。
「心配させるな、心臓が止まるかと思ったぞ」
エルシス……
どうして優しくするの?
私はあなたに優しくしてもらえる人間じゃないのに…
「どうしてこんな所にいたんだ?」
漆黒の瞳が私を見つめる。
「…私にも一人になりたい時くらいあるよ」
焼きもちだって事はわかってる。
それで冷たくあたってしまう自分も自覚してる。
でも……抑えられない。
「心配するだろ」
「…だって!!エルシスは私のことなんて…」
見てなかった……
あのお姫様と楽しそうに話してた。
私は……エルシスに寂しそうな、悲しそうな顔しかしてもらえない。
私は……エルシスの傍にいたいのに…