巫女と王子と精霊の本
「俺が……?」
「っ……なんでもな………」
「隠すな、鈴奈…」
―グイッ
エルシスが私の両肩を掴み、私の目を見つめる。
「…っ…エルシスっ…離し…」
「鈴奈、言ってくれ。お前の気持ちが知りたい」
なんで……
なんで私に構うんだろう…
私はエルシスを幸せにはできないのに…
「私は……」
それでも私を見てほしい…
「私の事を見てほしくて…」
私の前でも笑ってほしくて…
「私と話すときは、エルシス…辛そうだから…」
それが苦しかった…
「…エルシスには笑っていてほしいのに…」
「っ!!」
―ガバッ!!
エルシスに強く抱き寄せられる。
あ………
エルシスの心臓の音……
早くて私のと似てる。
私も今はドキドキしてるから…
「……なぁ、それってどういう意味だ…?」
「……え……?」
意味って……?
「俺の事、少しでも想ってる」
「!!」
それは……
少しどころか、私はエルシスを…
「そう思っていいのか?」
少なくとも、焼きもち焼くくらいには…
ううん、違う。
「私は………」
あなたが好き……
初めて本を開いたあの日から、あなたに恋をしてた…
―ズキンッ、ズキンッ!!
「…う、あぁっ!?」
胸の刻印が死への時を刻む。
それは誰かを想う傷みに似ていた。
「鈴奈!?」
エルシスは胸を押さえる私を心配そうに見つめる。
「ははっ…大丈夫…」
「そんなわけないだろ!!」
心配かけまいと明るく接したつもりが逆にエルシスを怒らせてしまった。
「…ごめんね……」
心配かけてごめんね…
ほら、私はエルシスを心配させて、今みたいに辛そうな顔をさせる。
エルシスの頬に触れてみる。
「っ!!鈴奈?」
エルシスは驚いたように目を見開く。
「こんな顔、させたいわけじゃないのに…」
「っ!!」
エルシスは泣きそうな顔で私を掻き抱いた。