巫女と王子と精霊の本
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「…鈴奈………?」
急に黙った鈴奈の名前を呼ぶ。
「……う…ん…」
眠ってるだけか……?
顔色は悪いが眠っているみたいだった。
ただ、なぜ急に…?
「…鈴奈、お前本当にどうしたんだ?」
問いかけても返事は返ってこない。
顔にかかる髪を払ってやる。
「……素直にお前に伝えられたらいいのに……」
そうしたら俺はこんなに不安で苦しい思いをしなくてすむのに……
「……お前を奪ってしまえたらどんなによかったか……」
王子も、英雄の肩書きも全て捨てて、お前だけの為に在れたなら……
「迷わずお前を愛せたのに……」
お前の事を迷わずに奪えるのに…
立場や肩書きが俺を縛る。
俺は皆のモノでなくてはいけないと…
「…鈴奈……愛してる……」
お前の意識が無いときにしか、伝えられない。記憶に残らないように、俺だけの秘密にして………
「せめて、俺だけに守らせてくれ…」
俺を導く清らかな巫女……
俺の愛しい人…………