巫女と王子と精霊の本
「私はアルサティアの巫女って言われてるんだけど、鈴奈って呼んでね!」
「へ?は、はい…」
ラミュルナ王女は不思議なもの見るように私を見つめる。
「今は信じてとしか言えないけど、私はあなたを助ける為に存在してるの。だからあなたの敵じゃない」
ラミュルナ王女の前に膝をつき、檻を握るラミュルナ王女の手に自分の手を重ねる。
冷たい……
ずっと一人でいたんだね……
「必ず助けるから!」
「…どうしてです?私とあなたは今日出会ったばかりだというのに…」
「人を助けるのに理由って必要かな?」
「あ…いえ……必要ないです」
「ね?」
この人がエルシスを幸せに出来る人…
私には出来ない、許されない…
「…アルサティアの巫女の事は知っています」
「え?」
「檻に捕らわれている間に魔王から何度かあなたの事を耳にしました」
魔王が……
「魔王ってどんな化け物なの?」
絶対角があって、鋭い牙に爪があって…
「いえ、姿形は人間でした」
「え、そうなの!?」
「はい。ただ……」
「ただ?」
ラミュルナ王女は何かに怯えたように俯く。
ラミュルナ王女…?
「あの人の紅い瞳が…とても恐ろしいと感じました…」
紅い…瞳……?