巫女と王子と精霊の本
「あぁ!巫女様前!!」
「えっ…?わわっ!!」
セレナを見ながら歩いていたせいで、目の前の段差につまずいてしまった。
嘘!!こ、転ぶ!!
衝撃を覚悟してギュッと目をつぶる。
―ガシッ
すると、転びそうになった瞬間、強い力で抱き寄せられた。
あ、え!?な、何!?
慌てて振り返ると、エルシス王子が苦笑いしながら私を抱き抱えている。
「自慢の運動神経はどうしたんだ、鈴奈」
「あはは…」
もう笑うしかない。
しかもさっきの話、聞かれてたなんて…。
「ほら、怪我ないか?」
エルシス王子が私を優しく下ろしてくれた。
おぉ、さすが王子さま!
やっぱり頼もしいなぁ……。
「うん、大丈夫!ありがとうエルシス王子!」
私がお礼を言うと、エルシス王子は顔をしかめる。
「その…エルシス王子っていうのは止めろ。お前はエルシスで呼べ」
「…えぇ!!?王子付けないで私処刑になったりしない!?」
王子を呼び捨てにして罪人になんかなったら…。
色々想像しては青ざめる。そんな私を、エルシス王子は笑いを堪えながら見ていた。
「くくくっ…そのくらいで処刑はない。だから呼べ」
「うーん。わかったよ、エルシス王……エルシス」
「くくっ…ぎこちないな」
だって……。
いきなり王子呼び捨てだよ!?
ぎこちなくもなるよ!!