巫女と王子と精霊の本
「もう笑わないでよ!」
「お前が笑わせてるんだ」
それでも笑い続けるエルシスを見て、私は温かい気持ちになっていた。
エルシス…。
王子なのに気取らず、気さくな所が皆に愛されてるんだろうな…。
これから先、私はこの人を救えるのかな…。
本に書かれていた、エルシスの死ぬ未来を思い出す。
私に…変えられるの…?
「どうした、鈴奈。顔色が悪いぞ」
エルシスが心配そうに私の顔をのぞき込んでくる。
「そうかな、太陽が隠れてるからそう見えただけじゃない?」
ごまかすように笑い、私は空を見上げる。
ずっと曇り空だな…。
あの日から、太陽が隠れる事が多くなった。
不安も増してくる。
「嘘つくな、そんな青い顔をして言われても説得力ないぞ」
エルシスが私の顎を掴み、私を見つめる。
エルシスの瞳…真っ黒だ…。
透き通る綺麗な漆黒…。