巫女と王子と精霊の本
「王となれ、セキ。そしてエルシス王子と共に国を導け」
「……俺が…ギオウ国を…」
『巫女、どうやらその子供が王になるらしいな』
―はい、彼はセキ・ギオウ、ギオウ国の第一王子です。
『迷っているようだな』
―今、突然言われたからでしょうか…
『いや、第一王子であれば覚悟をしていたであろう。いつか、自分が国を導く時が来る…とな』
そういうものなのかな……
だとしても、不安はあるはずだよね。
私は…どうしたらいいんだろう…
「…セキ…」
「鈴奈…」
私の名前を呼んだとき、それは本当に私を求めた時だ。
私、セキに何をしてあげられる?
私は……
「…俺、王になるって思ったら怖くなった。本当に導けるのかって…」
「セキ…」
名前を呼ぶ事しかできないのが、こんなに苦しいなんて…
「でも……。俺が導かなければならない。不安だけどさ、反対にこの大切な場所を、この手で守るんだと思ったら…不思議と幸せな気持ちにもなった」
それは、驚き。
私はセキが、不安や恐怖に埋もれてしまうのではないかと思った。
でも……
セキは、王なんだ。
私は、セキの何を見てきたんだろう…
「…セキ、セキが国を大事に思っている限り、ギオウ国は幸せな国になるよ」
「あぁ、俺の…俺の守る場所だからな…」
セキは真っ直ぐに前を見据えた。
新たな王の誕生だった。