巫女と王子と精霊の本
「鈴奈!!」
「エルシス!」
私を呼び止めるエルシスに背を向けたまま声を上げる。
今は、敵襲をなんとかしなきゃ…
私が迷ってたら、皆消えちゃう。
エルシスがいなければ戦えない。
私がエルシスを引き留めちゃいけないんだ。
「この世界を救えるのはエルシスだけなんだよ!皆の所へ行かなきゃ」
私だけのものじゃない。
皆のもので、ラミュルナ王女のもの…
私には最初から遠い存在だったんだ。
「…それは……。だが、お前は…」
「行こう…」
有無を言わさない、ただ強く言い放った。
「……無理はするな…頼むから…」
消え入りそうなエルシスの声は聞こえないふりをした。
…エルシス、ごめんね…
悲しませることしかできなくて…
泣きそうになった。
それでも泣かないように空を見上げた。