巫女と王子と精霊の本


――――――――――――――
――――――――――
――――――



陣営まで戻ると、すでに魔物と兵が戦っている最中だった。
その中で戦っているであろうセキの姿を探す。


「セキ!」


姿が見えない。
これだけの兵と魔物がいれば見つけるのは難しい。



「大丈夫だ。ギオウ国の隊が正常に機能している、セキが指揮をとってるんだろう」


エルシスが私の肩に手をおく。


「逃げろとは、言わない。お前は聞き入れてくれそうにないからな」


「さすがエルシス。私の事わかってる」



そう言って笑うとエルシスは困ったように笑った。





「ただな、俺の後ろから離れるな。絶対に守ってやるから…」





漆黒の瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
それだけで大丈夫、そんな安心感が不安を打ち消していく。


「うん、傍にいる」



約束する、そんな意味をこめて強く頷いた。




エルシスはそれを見届けると、真っ直ぐ前を見据え剣をぬく。



「怯むな!!己の剣を信じろ!」


「オォォォォッ!!」




エルシスの一言で士気が上がる。
そしていっせいに魔物の群へと兵達が向かっていく。


「ハァァッ!!」



―ザシュッ!


エルシスは隊の後方で私を守りながら戦う。




―ドクンッ


「なんだろう……」



すごく胸騒ぎがする。


―ドクンッ


ううん、胸騒ぎとは違う…
でも、この感覚……



『―鈴奈』


「っ!!」


この声は!!


「おい!鈴奈どうした?」


エルシスが様子のおかしい私に気づき肩を掴む。



「来る…」


もう一人の私、あの人が………



「来る?何がだ!?」

「黒の結末を綴る者…」

「!!」



私の一言で察したのか、エルシスが息をのむ。













< 248 / 300 >

この作品をシェア

pagetop