巫女と王子と精霊の本



「エルシス王子!!」




そこにセキがやってきた。
恐らく、男と一緒に魔物も消えたんだろう。



鈴奈も一緒に……





「おい!どうしたの?鈴奈は?エルシス王子と一緒じゃなかったの?」



セキは不安そうに周りを見渡す。



「巫女サマ、すぐにいなくなるんだから…」


「…………………………」



「?ちょっと、エルシス王子?聞いてる?」



セキの呼び掛けに俺は呆然と立ち上がる。今、俺はどうしたらいいのかわからなかった。




何をすべきなのか、いつもなら明確だった。なのに……




こんなに不安で、答えが見えないのは何故だ?




「おい!エルシス王子!」



―ガシッ



「っ………」


セキに肩を捕まれる。




「どうしたの?いつまで呆けて…っ!?



途中でセキが息をのんだのがわかる。
理由はすぐにわかった。



俺が……泣いてるからだ。




「……なっ…どうしたってのさ!?」



セキは目を見開き固まっている。





俺が泣くのがそんなにおかしいのか。
俺だってどうかしてる。
すぐにあいつを助けないといけないってのに…




「鈴奈に何かあったのか……?」



セキはハッとして尋ねる。
"鈴奈"、こいつが名前を呼ぶときは真剣な時だ。



同じようにあいつを想ってるからこそわかる違い。



































< 255 / 300 >

この作品をシェア

pagetop