巫女と王子と精霊の本
「エルシス王子!!」
そこにセキがやってきた。
恐らく、男と一緒に魔物も消えたんだろう。
鈴奈も一緒に……
「おい!どうしたの?鈴奈は?エルシス王子と一緒じゃなかったの?」
セキは不安そうに周りを見渡す。
「巫女サマ、すぐにいなくなるんだから…」
「…………………………」
「?ちょっと、エルシス王子?聞いてる?」
セキの呼び掛けに俺は呆然と立ち上がる。今、俺はどうしたらいいのかわからなかった。
何をすべきなのか、いつもなら明確だった。なのに……
こんなに不安で、答えが見えないのは何故だ?
「おい!エルシス王子!」
―ガシッ
「っ………」
セキに肩を捕まれる。
「どうしたの?いつまで呆けて…っ!?
」
途中でセキが息をのんだのがわかる。
理由はすぐにわかった。
俺が……泣いてるからだ。
「……なっ…どうしたってのさ!?」
セキは目を見開き固まっている。
俺が泣くのがそんなにおかしいのか。
俺だってどうかしてる。
すぐにあいつを助けないといけないってのに…
「鈴奈に何かあったのか……?」
セキはハッとして尋ねる。
"鈴奈"、こいつが名前を呼ぶときは真剣な時だ。
同じようにあいつを想ってるからこそわかる違い。