巫女と王子と精霊の本





「魔王のところにいたら鈴奈は良いように使われる!もしくは殺される!!好きなんだろ!?なら、何で迷ってんだよ!!」



セキは怒りを押さえられないのか、血が滲むほど剣を握りしめる。




「好きなら迷うな!!惑わされるなよ!!あいつが欲しいなら、全力で引き留めろよ!だから鈴奈も不安になるんだ!!お前が弱いから!!」



「…セキ……」




こいつがこんなに怒った所をみたのは初めてだ。それほどまでにあいつを…




「鈴奈にも帰る場所があるのはわかってる。それでも、引き留めろよ!俺なら、何がなんでもあいつを帰さない」


「…それは、あいつの世界の家族を、居場所を奪うってことなんだぞ!?」





その、居場所を捨てさせろと?
できるわけないだろ!!
できるわけ………



「一度でも、お前は言葉にした?ここにいて欲しい、全てを捨てても、傍にいてほしいってさ。言わないうちから諦めんなよ!」


「……それは………」





伝えないうちから諦めるな…か…



確かにそうかもしれない。
伝えたことで、あいつが悩み苦しんでも、最後にきめるのは鈴奈だ。



それでも鈴奈が傍にいたいと言ってくれたなら……


「……お前の言う通りだ……」





俺は苦笑いで空を仰ぐ。



「そう、わかった?ヘタレ王子」


「ヘタレって、お前な」


いや。違いないか……
本当、俺はヘタレだ馬鹿だ。



「…行くぞ、セキ。鈴奈をとり戻して、世界も救う」

「おー、強欲だねぇ♪さすが、勇者サマ」


「お前……。思ってないだろ、絶対」




憎らしいが、憎めない。
まったく…どうやら俺には力強い仲間がたくさんいるらしい。



鈴奈……
今度お前をこの手に取り戻す時は…





この想いを隠さずに伝えよう。
お前の事を………………ると……















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