巫女と王子と精霊の本
「大丈夫、きっと疲れてたんだと思う」
笑ってみせると、ラミュルナ王女は優しく私の手に触れる。
「かの苦を払い、癒せ…」
―パァァァッ!
光が私を包み込む。
体の疲れが一気に吹き飛ぶ。
「こ、これっ……」
「少しは、お役にたてたでしょうか?」
これが、ラミュルナ王女の、癒しの力……
「この力が、少しでもあなたの心と体を癒してくれればよいのですが…」
ラミュルナ王女……
優しい人……
「ありがとう、ラミュルナ王女…」
そな優しさがあまりに温かくて、涙がでた。
「ラミュルナ王女、これからの事を話してもいい?…じゃなくて、ですか?」
「鈴奈、私には敬語必要ありません。あなたとは友として接してほしいのです」
よ、良かった。
あんまり敬語になれてないから、喋りずらかったんだよね。
「うん、ありがとう!」
「ふふっ、こちらこそ」
無邪気に笑うラミュルナ王女に笑顔を返す。
「ラミュルナ王女、私達は各国、竜の一族総出で魔王を倒す為に立ち上がりました。すでに、ヴェルデ王国目前までたどり着いています」
「ヴェルデ王国へ?」
そうだった、ラミュルナ王女は知らないんだ。魔王の住まう場所が、ヴェルデ王国である事を…
「ラミュルナ王女、どうか落ち着いて聞いて下さい」
ラミュルナ王女の手を両手で握りしめる。
ラミュルナ王女は覚悟を決めたように真っ直ぐ私を見つめる。
「ヴェルデ王国はすでに滅んでる。そして、魔王はヴェルデ王国跡地に自分の城を築いて、あなたをここへ閉じ込めた」
「ヴェルデ王国が…………皆は、民は!?」
ラミュルナ王女が私の肩を掴み泣きそうな顔で尋ねる。
「ごめんね、私も途中で拐われちゃったから、ヴェルデ王国をこの目で見たわけじゃないんだ。だから、ヴェルデ王国の人達がどうなったかわからない」
「そう……。私は、王女だというのに…」
「ラミュルナ王女………」
エルシス王子を見ていたからわかる。
国を守れなかった、それがどれだけ苦しいことなのか……
「ラミュルナ王女、まだ終わってないよ。魔王がいたら、また苦しむ人が出ちゃうから、私達も戦おう。アルサティアの未来の為に」
「鈴奈………。そうですね、私も前を見なければ…」
ラミュルナ王女は強い。
でも、きっとすごく辛い。
「ラミュルナ王女、一緒に」
だからせめて、ラミュルナ王女を支えられるようにと手を差し出す。
「はい!」
ラミュルナ王女は力強く頷き、私の手をとった。
「じゃあ、ここから出よう!」
「で、ですがどうやって…?」
―ジャラン
ラミュルナ王女の足に繋がれた鎖が音を立てる。
「出きるかわからないけど、やってみる」
私は目をつぶり、遠くにいる友に語りかける。
―エクレーネさん…
泉の精霊であるエクレーネさん。
エクレーネさんなら力を貸してくれるかもしれない。