巫女と王子と精霊の本


『鈴奈ー…』


―エクレーネさん!!


声を聞くのはひさしぶりな気がする。
なんか、ほっとするなぁ…



『また窮地にいるようだな。強大な力を感じる…魔王か?』



―はい。魔王の城に捕らわれちゃったみたいで…あはは…



空笑いすると、エクレーネさんはため息をついた。


呆れられてるんだろうな……
もう、頭が上がらない。



『それで、我に何を求める?』


―うん。ちょっと助けて下さい!




エクレーネさんに簡単に今の状況を説明し、鎖と牢の鉄格子を壊してもらえるよう頼んだ。



『状況は分かった。任せておれ』

「ラミュルナ王女、私の後ろに!」



私は両手を鉄格子に向ける。




―エクレーネさん!

『はいよ』


―バァァァンッ!!




物凄い水飛沫が鉄格子を破壊する。
それと同時にラミュルナ王女の鎖が砕け散る。



『魔王はすぐに牢が壊れた事に気づいてるだろう。はよ、その場を離れたほうがよい』


―うん、わかった!
ありがとう、エクレーネさん!



『なに、お互い様だろう。約束だからな』

―うん!




「鈴奈、こ、これは一体……」

「ラミュルナ王女!行こう!」



早くここから離れなくちゃ…
どこが出口かもわからないけど、なんとかしなくちゃ…



「は、はい!」


ラミュルナ王女の手をひいて、地下牢から出る階段をかけ上がる。




すると、真っ直ぐに続く廊下が目の前に現れる。



「え、一本道!?」

「そのようですね、ですが後ろは牢へ戻る道しかありません。もう、進むしか…」




そう、だよね。
前に進むしか道がない…



でも、嫌な予感がする。
これ、罠じゃないかな……?



「鈴奈。たとえ罠だとしても、魔王に、会えるのなら私達は会わなければならないのではないでしょうか?」


「…ラミュルナ王女……」


「本当に戦わなければならないのか、話し会えばこれ以上傷つく人も最小限に抑えられる。話し合うべきです」



…ほんとなら、自分の国を滅亡させた魔王を恨んでいるはずだった。



でも……色んな思いを抱えながらも正しい道を、答えをもっている。


この人なら……エルシスを支えていける。
その強さがある。


「そうだね、一緒に守ろう」


なんとしても、この人を助けなきゃ。
エルシスに、続くこのアルサティアの、希望……




私の、友達……………



「ええ、行きましょう」




互いに頷き合い、廊下をかける。


魔王……
どんな人なんだろう……



それに……



「鈴君……」


もう一人の私、鈴君も魔王と一緒にいるはず。何故だか、もう一度会わなきゃいけない気がする…




エルシス……
私が気を失った後はどうなったんだろう。
エルシス、無事だよね……?
お願い、生きていて…


ううん、エルシスなら大丈夫。
絶対…大丈夫!




自分に言い聞かせるように首を横に振る。迷いを断ち切るように走る速度を早めたのだった。

























































































































































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