巫女と王子と精霊の本
――――――――――――――
―――――――――
―――――――
―ヴェルデ王国跡地
「これは……なんだ……?」
ヴェルデ王国の城があった場所には、見えない壁のようなものがある。
「この先に行けないね。これも魔法か何か?」
セキは頭をガシガシと掻きながら眉間に皺を寄せる。
俺達は人間だ。魔法何てよくわからないし、使えもしない。
「くそ、どうすれば……」
『そう急くな、人の子の王子』
…な、今声が…。なんの声だ!?
辺りを見回すと、竜王が俺を見下ろしていた。その瞳は、しっかりと俺を見ている。
―竜王…なのか?
おそるおそる鈴奈に教わったように心で声をかけてみる。
『そうだ、我だ。どうやら、ここは魔力に溢れているらしい。あの娘と同じように同調することで言葉を交わす事が出来た』
―同調?
なんだか難しいが、ここにいる限りは言葉を交わせるって事か?
『そういうことだ』
―そうか、良かった。竜王は俺の言葉を理解しているようには見えたが、俺はお前の思いをくみ取るのは難しいからな。
なんせ、表情に乏しいだろ。
『そうか?我にはわからん』
その返答に苦笑いを返す。
首を傾げる竜王に、俺は切り換えて真剣な瞳を向けた。
―竜王、俺は急いでいるか?
先程の言葉を思いだし、尋ねる。
『あぁ、見るに見かねるほどにな』
―そうか………
竜王がそこまで言うんだ、そうとう俺は焦っているんだろう。
『我が何故ここにいる?共に戦う為であろう?一人で悩み、苦しむのではなく、仲間とやらを頼れ。我等、竜一族はその為に在るのだ』
…仲間を頼る……
そうか、なんとかしなければと追い詰められていた。
俺は一人ではないのにな……
竜一族からそんな風に言ってもらえるのは、鈴奈がいたからだろう。
今もこうして、あいつが繋いでくれた絆が俺を救ってくれる。
今度は、俺が守りたい。
「竜王、力を貸してくれ。この先に進みたい!」
『よかろう、我等の背に乗れ』
竜王が頭を屈める。
その上に俺は股がった。
「まさか、竜に乗る日がくるなんてね」
事情を説明すると、セキも竜の背に乗る。