巫女と王子と精霊の本
「その手を離せ。でなければその腕、斬り落とすことになるが?」
絶望していると、頼もしい声が聞こえた。
この声、エルシスだ!!
「っ…エルシス!!!」
エルシス…助けに来てくれたんだ!!!
「だ、誰が離すか!!この女は高く売れるからな」
「売る……だと……?」
「この女を欲しがってる奴がわんさかいんだよ!!!」
え……?
私を欲しがってるってどういうこと?
私が…巫女だから…?
知らない所で私を狙ってる人間がいる…。
恐くなって体がブルッと震えた。
「大丈夫だ………」
すると、エルシスが真剣な顔で私を見た。
「約束しただろ?お前を守る盾になると」
「あっ…………」
私がアルサティアの巫女となった時、エルシスが私にしてくれた約束…。
そうだ。エルシスが守ってくれる。それが巫女だからだとしても、こんなに心強いことはない。
「俺を信じろ、鈴奈」
……エルシスを信じる。
エルシスの言葉に私は強く頷く。