巫女と王子と精霊の本
これなら……。
この人の弱味につけ込めるかも!!
「あ、あなた、後悔しますよ……」
「あぁ!?」
私の言葉に、盗賊の男は声を裏返らせる。
この人、精神的に弱そう。適当なこと言って油断を誘えないかな…。
「な、何に後悔するんだよ!!」
あ、乗ってきた!!
これならいけるかも!!
私はわざとらしく無言で首を横に振る。
「いえ、私の口からはとても…」
「い、いいから言え!!!でないとこ、殺すぞ!!!」
「っ!!!」
剣の刃がまた強く押し当てられ、そこから血が流れた。
痛い…。
うぅ、あんまり動かないでよ……。
「止めろ!!それ以上傷つけるな!!!」
エルシスが珍しく動揺したように声を荒げた。
大丈夫…私は大丈夫だから…。
そんな思いを込めて、私はエルシスを真っ直ぐに見つめる。