巫女と王子と精霊の本
何で、今まで忘れちゃってたんだろう。
あんなに何回も熟読するくらいに好きな物語だったのに。
「どれどれ…」
私は久しぶりにその物語を読んでみる事にした。
私がまだ小さい時にお母さんに買ってもらった本。
共働きの両親はほとんど家にはおらず、ずっと一人ぼっちだった。
一人静まり返る部屋で本を読む。
本を読んでいる間だけは孤独を忘れられた気がしたのを今でも覚えてる。
「ん?あれっ……?」
題名が無い……。
うそ、元から無かったっけ?
首を傾げながらも、私は本のページをめくる。
「えっ………?」
しばらく進めると、物語の話しが変わっている事に気づいた。
「何これ…」
幸せな結末を迎える温かい物語のはずが、国も人も滅び王子は死に、姫が魔王の花嫁となり世界が魔王のモノになるという最悪な結末に変わっていた。
どうして………?
私が見た結末と違う…。
『それは、黒の結末』
「え!!!?」
―パァァッ!!
声が聞こえたかと思うと、目の前に光が現れる。
すると、そこには妖精の羽が生えた手の平サイズの小さな男の子が現れた。
金の透き通るような髪に、くりくりとした碧眼。
まるで、絵本の中から出てきたかのような妖精だ。
「え…えぇーーっ!!!?」
―ドスッ
驚きのあまり尻餅をつく。
ついに妖精が!!!!
妖精が見えちゃったよ!!
『驚かせてごめん!!僕は本の精霊、フェル』
「せ、精霊??」
フェルという精霊は、私の持つ本の上に座る。