巫女と王子と精霊の本
「ひっ!!」
「牢へ連れて行け!!」
エルシスの一言で兵が盗賊を連れていく。
捕まった女の人達も全員無事に助け出された。
国が復興してない今、治安の維持にまで手がまわせていないんだ…。
そのせいでこういう事がたびたびあった。
これじゃあ皆安心して暮らせないよね…。
こういう時に何も出来ない自分がくやしい。
「鈴奈」
牢へ連れていかれる盗賊を見送りながら、そんな事を考えていると、エルシスが私の目の前に立った。
その顔は、どこか怒っているように見える。
「何で追ってきた?」
「あ……」
私がエルシスを追ったから、エルシスに迷惑をかけちゃったんだった。
「お前は女だ、民を助けたいと思っているのは知っている。だがお前がそれで傷ついたら意味無いだろ!!」
「…ごめん、エルシス…」
ただ、何かしたかった。
巫女になって、この国の人達に触れて、皆良い人で…。
私も力になりたかった。
守りたかったんだ…。
でも結局…何も出来なくて、犠牲になった人もいた。
だから、今度こそはってやってきたけど、やっぱり私は足手まといなのかな?
涙が滲んできた?
それを見たエルシスが私の頭を軽くなでる。