巫女と王子と精霊の本
「すまない、言い過ぎた。だが、無茶しないでくれ。お前が傷つく所を見たくない…」
「うん、ごめん…」
その言葉に、私は何度も頷いた。
「それから、お前に聞きたい事がある」
「聞きたい事?」
首を傾げると、エルシスの漆黒の瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
「お前の力は、誰の未来でも見る事が出来るのか?」
「………え?」
「先程、あの男の未来を見たんだろう?」
あぁ、あのでたらめな先見の事か!!
「あれはでたらめだよ。油断させられないかと思って…」
「でたらめ!?お前…女にしとくにはもったいないくらいの策士だな、ククッ」
笑い出すエルシスにあたしは苦笑いを浮かべる。
いやいや!女にはしといて下さい!!
「だが、見る事も出来たのか…?」
「ううん、私は、未来を見るわけじゃなくて、物語の……」
そうだ。私には未来が見えるわけじゃない。
物語を知ってるだけ…。
これから、この物語が辿るべき道へ、導くだけ。
それがこの世界の幸せに繋がるから…。