巫女と王子と精霊の本
「おい、大丈夫か?」
「あ……ごめん。急に黙ったりして…。そろそろセレナが騒ぎ出してる頃だから…私、行くね」
私は笑顔を作り、その場から逃げ出す。
この事は誰にも知らせるわけにはいかない…。
物語を正しく綴る為に…。
「鈴奈!!」
エルシスの声には気づいたけれど、そのまま無視をした。
ごめん、エルシス…。
私、あまり嘘が得意じゃないから…。
今はまだ、エルシスやみんなに知られるわけにはいかないの…。
「巫女様!!!」
セレナが泣きそうな顔で私に駆け寄る。
心配かけちゃったみたいだね…。
「急にいなくなって!!どれだけ心配したか!!!」
「うん…。ごめん、セレナ…」
私はセレナの頭を優しく撫でた。
「巫女…様……?どうかされましたか?」
セレナは心配そうに私を見上げる。
あ…セレナって本当に鋭いというかなんというか…良く私の事みてる。
「大丈夫。たいしたことじゃないよ。そろそろ帰ろう?」
「……はい。巫女様…」
まだ心配そうに私を見るセレナに苦笑いをしながらも、私達は城へと戻るのだった。