巫女と王子と精霊の本
「エルシス、今日くらい休んだって誰もエルシスを責めたりしないんじゃない?」
「駄目だ。今この瞬間も多くの民が苦しんでいるんだ。休んでる暇なんか…」
「なら、誰がエルシスの苦しみを癒してあげるの?」
一人で頑張って、誰よりも傷ついて…。
エルシスは優しすぎるんだ。
だから…危険な目にあって、あなたが死ぬ未来が生まれる。
エルシスが王子じゃなければ普通に生活出来たかもしれないのに…。
「鈴奈…。わかった、わかったからそんな顔するな」
「…そんな顔って?」
エルシスが焦ったようにあたしを見る。
「泣きそうだ…。俺はお前に泣かれるとどうしたらいいかわからなくなる…」
あぁ…。私、またエルシスに心配かけてる。
ただ力になりたいだけなのに、これじゃあ、頼ってもらえない。
「お前くらいだよ、俺に休めなんていう女は」
「エルシス……」
エルシスは愛しげに笑い、私の頭を優しく撫でた。
「…無理しないで。もし苦しかったり、恐かったりしたら逃げたっていいんだよ。王子だって人なんだから…」
私の言葉に、エルシスは目を見開いた。
「私は…私だけは…。エルシスの味方だよ。エルシスの弱さも含めて受け止める。私があなたを守るから…」
この人の心も命も、私の力の全てで守る。
王子という使命に捕われたこの人を私が…。