巫女と王子と精霊の本
「鈴奈は俺を普通に見てくれるんだな」
「普通に?」
「他の人間は俺を王子としてしか見ないからな」
あぁ…
そう意味ね。
「どうなんだろう…。私の世界には身近に王子様とかいなかったし、歳も近そうだったから…」
「まぁそれもあるが、鈴奈の生きてきた環境がそうさせてるんだろうな…」
確かに、私は身近に身分の違いなんて感じなかった。
皆が平等な世界…
争いも身分も無い。
私のいた世界は平和だったのかもしれない。
「いつかお前のいた国に行ってみたいな」
「…それは……」
私の故郷はここには無い。もっとずっと遠くにある。
世界も時空さえも違う場所…
いつか…
私の世界に来てくれたら…
そんな淡い期待すらむなしい。