巫女と王子と精霊の本
「まだ思い出せないのか?」
「えっ…あ、うん…ごめんね…」
嘘ついてる事が苦しくて俯いた。
目…見れないや…
嘘ついてごめんね……
「…お前はそうやってたまに悲しげな顔をするな」
「そうかな…?」
「力にはなれないのか?」
エルシスの言葉に私は無理矢理笑顔を作った。
「ありがとう。でも今は平気!ほら行こうエルシス。皆を助けたくてうずうずしてるんでしょ?」
私はエルシスに手を差し出す。
「………あぁ、そうだな。行こう、鈴奈」
エルシスは何か言いたげに私を見たけどすぐにいつもの優しく強い笑みを浮かべた。
…知られては駄目…
物語が変わらないように、役目を終えるまで。
私は……
この世界の人間じゃないんだから…