巫女と王子と精霊の本
「…良かった……」
―ポタンッ
本に涙が落ちた。
…エルシスが無事で良かった…
変えられなかったらどうしようって、不安で…
「本当に…良かった…」
ギュッと本を抱きしめる。私の大切な物語…
ちゃんと守れた…
―チャポンッ
『浅夏 鈴奈』
泉から顔を出したクレアーネさんが私に笑顔を向ける。
『お前の助けたい人間は救えたのか?』
その問いに私は何度も頷いた。
「クレアーネさんのおかげです!本当にありがとうございます…」
私は深々とクレアーネさんに頭を下げた。
『よい。わらわもそれなりの対価を貰ったのだからな』
対価…
互いに助け合うという約束…
「クレアーネさんが困った時、私が全力で力になりますから!!」
『くくっ…期待しておるぞ』
私達が笑顔を交わしていると、背後で枝を踏む音がした。
私達が振り返ると、そこにはエルシスが立っていた。
「探したぞ鈴奈。まだここにいたのか……っ!?」
エルシスは私の後ろにいるクレアーネさんを見て目を見開いた。
それはそうだよね、クレアーネさん人魚だし。
私もびっくりしたもんなぁ…