巫女と王子と精霊の本
『人間か…』
クレアーネさんは警戒したようにエルシスを見上げる。
「人魚…なのか……?」
エルシスは驚きながらも私達に歩み寄る。
『……………』
―ピリッ
「っ…クレアーネさん…?」
なんだかクレアーネさんが苛立っているように感じた。
「エルシス、止まって!!」
「!!」
私の声にエルシスが立ち止まる。
「ごめんなさい、クレアーネさん。あの人はエルシス王子。私が助けたかった人です」
『ほう…』
クレアーネさんはエルシスを上から下まで見遣った。
「………………」
エルシスは少し緊張したように私を見る。
"大丈夫"
私はそう目で訴えた。
『…浅夏 鈴奈、お前が守ろうとした者だ、わらわも信じよう』
その言葉にエルシスはほっとしたように息をついた。
「そっちへ行ってもいいだろうか」
『構わぬ』
エルシスが私の隣に並ぶ。