巫女と王子と精霊の本


「お前は本当に…」


「え……?」


何故かエルシスは悲しげに私を見た。


…エルシス……?


「早く記憶が戻るといいな」

「う、うん…」


記憶…か……
いつまで隠し通せるのかな…


『なんだ、隠しているのか』


「!!!」


突然頭の中に直接声が響いた。


『忘れたか、わらわとぬしは心話が出来る。これはエルシスには聞かれていない』

…良かった……


ありがとうございます、クレアーネさん…


『気にするな。誰しも語れぬものはある。ぬしがこの世界に来た理由もそこにあるのだろう』


はい……


私は頷いた。


「ぼーっとして、どうかしたのか?」


エルシスの声にハッと我に返ると、エルシスが私を心配そうに見ていた。


「う、ううん。大丈夫!さて、一段落ついたから城へ戻ろうか!」


なるべく明るく振る舞い私はクレアーネさんに頭を下げる。


「本当にありがとうございました。この胸の契約は絶対に守ります…」


私は胸に手を当てる。


私の中の温かい日だまりのような存在…


この世界には私の味方がいる。信頼出来る人がいる…


たとえここが私のいるべき場所でなくても……







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